神奈川新聞「教えて!ドクターQ&A」2020.2.14掲載
Q:下肢静脈瘤を患っています。治療法がいくつかあるようですが、どのようなものか教えて下さい。
A: 下肢静脈瘤の治療の第一歩は弾力ストッキングによる圧迫療法です。履くのは少し力が必要ですが、症状の改善、皮膚トラブルや血栓予防に役立ちます。
軽症の場合と重症の場合で違ってきます。軽症はクモの巣状、網目状と呼ばれる小さな静脈瘤で、硬化療法で治療されます。細い針で薬を注入して固めてしまう治療で、数分で終わります。保険適用です。
中等症、重症は表面にボコボコした血管が目立ったり、皮膚が黒くなってきていたり、皮膚潰瘍ができていたり、むくんでいたりする症状です。手術治療の適応です。まず、太い幹の部分に対しては、カテーテルを挿入してレーザーや高周波などの熱刺激で焼しゃくするのが一般的です。グルーと呼ばれる血管の接着剤も使われ始めていますが、アレルギーなどまだ課題も多いようです。枝の部分、膝下の蛇行してボコボコと目立つ部分については、小切開して取り除く方法がまだ一般的ですが、カテーテルで焼いてしまう新しいテクニックも普及してきています。
また、従来は血管外科が扱う疾患でしたが、最近では心臓弁膜症、リンパ浮腫や皮膚疾患、甲状腺などの内分泌疾患との関連性も指摘されはじめています。形成外科、皮膚科、循環器内科との連携も重要になってきており、下肢静脈瘤についての総合的アプローチも大事だと考えられています。背景疾患の精査も、ご検討ください。
ここ数年で、新しい器械や、テクニック、疾患概念などが次々に出てきており、非常に進化スピードの早い日進月歩の医療分野です。手術はできる限りからだに傷を付けず、負担が少ないように行われます。他疾患との関連が明らかになったり、病態の新しい考え方が出てきたりと進化しております。専門医として治療に携わってまいりましたが、10年前は、まったく想像すらできないことでした。日比研さんを積んでいこうと考えております。
村山 剛也 (医療法人社団慶博会 理事長)
横浜市出身。1996(平成8)年慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学外科、東京都済生会中央病院外科、ハーバード大学医学部リサーチフェローを経て、現在医療法人社団慶博会理事長。「日々できるだけ多くの方の診療に現場で臨むことが、自分のミッションだと思ってます」。2018年アメリカ静脈学会(American College ofPhlebology)にてAbstractGrant Winner賞(特別賞)を受賞。