神奈川新聞「教えて!ドクターQ&A」2017.5.24掲載
Q:足にこぶのようなものが浮き出ているのが悩みです。「下肢静脈瘤(りゅう)という病気かもしれません。症状や治療法について教えてください。
A:下肢静脈瘤は、よく見られる病気の一つで、日本では患者数1千万人以上と推定されており、足の表在静脈の逆流防止弁の破綻から起きる良性慢性進行性疾患です。静脈の血液は上へ向かって心臓に古い血液を戻す役割を持っていますが、運搬のための逆流防止弁が働かなくなり、古い血液がずっと足の下の方に滞る病気です。自然に治ることはありません。ゆっくりと進行していきます。
次に症状についてお話しします。足の血管が膨らんでこぶのように目立ったり、むくみ、足がつる(こむら返り)、かゆみ、痛みなどが最初に起きます。その後、数年かけてゆっくりと進行し、皮膚の湿疹、黒い色素の沈着、皮膚の潰瘍、血栓による痛みなどのトラブルが起きます。いったんトラブルが起きだすと、治療に長く時間がかかったり、血栓のトラブルが起きたあとでは手術が難しくなったりします。そのため早期の段階で、予防・治療していくことが大事です。
治療は、①弾性ストッキングをはく圧迫療法②注射で血管を固めて静脈を閉塞させる硬化療法③レーザーなどによる手術療法-があります。①弾性ストッキングは足先から段階的に圧力が設定されており、はいているだけでマッサージ効果があります。はくのにコツが必要ですが、はいてしまえば違和感はありません。静脈瘤の症状を改善し、進行の予防、手術時の補助療法になります。②の硬化療法は、網目状やクモの巣状静脈瘤と呼ばれる細かい軽度の静脈瘤に行われる治療です。日帰りで行われる簡便な処置で、保険適用の治療です。欠点は注射後の色素沈着で経験的には10~20%の頻度です。この色素沈着は時間がたつと消えることが多いです。③手術療法は昔から行われている外科手術(抜去手術)と新しいレーザー手術があります。両方とも日帰り手術が可能で、保険適用の治療です。麻酔は局所麻酔が基本ですが、静脈麻酔と呼ばれる眠り薬の点滴も使っていきます。寝てる間に手術は終わります。歩いて帰ることが可能で、翌日からシャワーも浴びることができます。術後の日常生活上の制限はほとんどありません。まず、病院でエコー検査を受けてどのタイプの静脈瘤か調べてもらいましょう。
村山 剛也 (医療法人社団慶博会 理事長)
横浜市出身。1996(平成8)年慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学外科、東京都済生会中央病院外科、ハーバード大学医学部リサーチフェローを経て、現在医療法人社団慶博会理事長。「日々できるだけ多くの方の診療に現場で臨むことが、自分のミッションだと思ってます」。2018年アメリカ静脈学会(American College ofPhlebology)にてAbstractGrant Winner賞(特別賞)を受賞。