Q4 下肢静脈瘤と再手術

神奈川新聞「教えて!ドクターQ&A」2018.5.15掲載

Q:60歳男性です。下肢静脈瘤(りゅう)の再発と診断され手術を受けることになりました。手術にはどのような方法があるのでしょうか。

 

A:下肢静脈瘤とは、脚の静脈が拡張して血流のトラブルが生じる病気です。むくみ、だるさ、こむらがえり、かゆみ、湿疹、色素沈着、皮膚潰瘍などをきたします。数年後の再発も数%の人に起こり得ます。

 手術の方法は、最近レーザーや高周波カテーテルによる切らない血管内手術が主流です。

 下肢静脈瘤には、木のように太い幹の部分と小さな枝の部分があります。レーザーなどのカテーテル治療は太い幹の部分にのみ行われます。では、小さな枝の部分は、どうやって治すのでしょうか。実は、この部分はメスで切って5㍉ほどの小さな傷をつけて、そこに釣り針のようなかぎ型の細い器具を入れて枝の部分の静脈瘤を引っ掛けて引っ張り出します。枝の部分の処理は、割と古典的なのです。スタブ・アバルジョン(Stab avulsion)と呼ばれる、比較的新しい方法ですが、小さな穴から盲目的に引っ掛けて引きずり出すので、神経障害、リンパ漏れ、取り残し、炎症による色素沈着などが起きることもあります。また、小範囲の枝であれば硬化療法という、薬品を注射して固めてしまう方法もありますが、これも20~30%の割合で色素沈着を起こす欠点があります。

 最新の治療で、この枝の部分も全てレーザーで処理する方法が最近、学会で発表されております。幹も枝も注射針のような中空の針で刺してそこにレーザーファイバーを通して内側から焼いてしまうのです。この方法により切開は全く不要になり、従来の方法の欠点である色素沈着、痛み、リンパ漏れ、神経障害は軽減しました。また、古典的なカテーテル治療方法では、アプローチが難しかった再発症例、蛇行した症例などもレーザー治療が可能となりました。しかしながら、経験、テクニックが必要であり、まだ一般的な治療となるまでは時間がかかると思われます。

 


村山 剛也 (医療法人社団慶博会 理事長)

横浜市出身。1996(平成8)年慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学外科、東京都済生会中央病院外科、ハーバード大学医学部リサーチフェローを経て、現在医療法人社団慶博会理事長。「日々できるだけ多くの方の診療に現場で臨むことが、自分のミッションだと思ってます」。2018年アメリカ静脈学会(American College ofPhlebology)にてAbstractGrant Winner賞(特別賞)を受賞。